編集部コラム
業種別に見る、CMの出演者数のかたち——単独主演型と群像型
CM名鑑編集部・公開
医薬品や化粧品のCMは1人の出演者で作られることが多く、転職・求人や通信のCMは複数人の群像で作られることが多い——業種ごとの出演者数の構成を集計しました。
CM名鑑に2026年10月22日時点で登録した986本のうち、出演者(cast)が1人のCMと2人以上のCMの比率を業種別に集計した結果です。
集計の範囲と見方
CM名鑑の各エントリには出演者(cast)が配列で登録されています。この配列の長さが1人なら「単独出演」、2人以上なら「複数人出演」として、業種別に件数の多い順で集計しました。対象はCM名鑑に2026年10月22日時点で登録した986本です。企業が複数人を起用する意図(世代別訴求、職種別の群像、対話形式の寸劇など)までは当サイトのデータからは分からないため、ここでは「単独か複数か」という構成の比率だけを扱います。
単独出演の比率が高い業種
- 医薬品: 全38本中31本が単独出演(82%)
- 化粧品: 全50本中39本が単独出演(78%)
- 外食: 全31本中24本が単独出演(77%)
- 日用品: 全51本中36本が単独出演(71%)
- 不動産: 全87本中61本が単独出演(70%)
医薬品・化粧品・日用品は、単独の出演者が商品を使う様子や感想を伝える形のCMが多く、1人に語らせる構成が選ばれやすい業種だと分かります。これらは効能や使用感といった「個人の体験」を伝える商材が多いことと関係していそうです。
複数人出演の比率が高い業種
- コンビニ: 全21本中17本が複数人出演(81%)
- 通信: 全47本中36本が複数人出演(77%)
- 転職・求人: 全57本中40本が複数人出演(70%)
- 電気・ガス: 全17本中11本が複数人出演(65%)
- 金融: 全118本中50本が複数人出演(42%)
編集部の見立てとして、複数人出演の比率が高い業種に共通するのは「対話や関係性」を描くことで訴求する構成が多いことだと考えられます。転職・求人のCMは「転職した人とその上司・同僚」、通信のCMは「家族や友人同士の会話」のように、1人の体験談だけでは伝わりにくい関係性や比較を見せるために複数人を起用している例が目立ちます。一方で金融業界は本数(118本)こそ多いものの、単独(58%)と複数人(42%)の比率は他業種ほど極端ではなく、商品内容に応じて起用の仕方が分かれている印象です。
もう1点、編集部が気になったのは、単独出演の比率が高い業種(医薬品・化粧品・外食・日用品)が、前回の「業種別CM本数ランキング」ではいずれも中位〜下位の本数だった点です。本数こそ食品・金融・飲料より少ないものの、1人の出演者にじっくり語らせる構成を取りやすいという意味では、広告の作り方としては対照的な位置づけにあると言えそうです。本数の多さと出演者構成の複雑さは、必ずしも同じ方向に動く指標ではないということが、この2つの集計を重ねることで見えてきました。
群像型の例を1本見る
転職・求人業界の群像型CMの例として、dodaの「選ぶなら、doda」2人に1人が使ってる篇や、どっちも使える篇があります。いずれも2人の出演者を使い、転職サービスの選び方や比較を見せる構成になっており、単独出演では描きにくい「比較」という要素を複数人の掛け合いで表現している例として読むことができます。
この集計だけでは分からないこと
「単独か複数か」という人数の構成は分かりますが、その複数人が家族役なのか同僚役なのか、あるいは有名人の対談形式なのかという役割までは、このデータからは判定できません。たとえば転職・求人業界の群像CMには「社員インタビュー形式」と「複数の転職エピソードを並べる形式」の両方が含まれており、どちらが多いかは個別にCMページを見る必要があります。この記事はあくまで人数構成という一つの切り口の集計として読んでください。
業種をまたいで見えること
今回の集計で興味深かったのは、金融(118本)のように本数が多い業種ほど、単独・複数の比率が中間的(単独58%・複数42%)になる傾向です。本数が少ない業種は1つの型に偏りやすく、本数が多い業種は複数の型が混在しやすい、という見方もできます。これは「業種別CM本数ランキング」で取り上げた本数の多さと、出演者構成の多様性が、ある程度連動しているのではないかという仮説につながります。今後、業種別の時系列変化(単独から複数へ、あるいはその逆への移行)も合わせて追えると、より深い傾向が見えてくるかもしれません。
当サイトでは出演者ページ・企業ページそれぞれで、出演CM・歴代CMを新しい順に一覧できます。気になる業種やタレントがあれば、まずは全体のランキングよりも個別のページで「どんな構成のCMが実際に作られているか」を見ていただくのが、この集計を一番活用しやすい読み方だと思います。